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20241/9

クレディセゾンのCSDX戦略の成果は?生成AIを軸にした業務プロセスの全面革新へ

2024年1月10日8:40

全社員が活用可能なAIツールを開発し、デジタル化加速

クレディセゾンは、デジタル先進企業を目指してDX戦略「CSDX戦略」を策定し、システムの内製開発やデジタル人材の育成などに取り組んできた。同社では2023年12月20日に記者説明会を開催し、「全社員」によるDX実現に向けた生成AIを活用した展開計画など新たな取り組みについて紹介した。

クレディセゾン 取締役(兼)専務執行役員 CDO(兼)CTO 小野和俊氏

2021年9月 新アプリやデジタルカードの期間短縮・低コスト化で成果

2022年11月「CSDX戦略」推進により内製開発や不正対策などの各分野で成果

外部ベンダー依存の開発体制から脱却
伴走型内製開発加速

クレディセゾンはクレジットカードが本業であり、百貨店など流通企業と連携してカード会員を獲得してきた。利用者の購買がデジタルシフトしていく中、リアルに強いというだけでは成長が頭打ちになるため、デジタル化が求められる事業環境にあった。同社では2021年9月にデジタル組織を立ち上げ、小野氏を中心にDX(デジタルトランスフォーメーション)化に取り組んできた、

フェーズ1として、ITのシステム構築はSIerに完全に委託する企業が多い中、すべてITをベンダーに依頼するのではなく、ゼロから内製化チームを立ち上げた。最初は3名でスタートしたが、スマートフォン(以下、スマホ)が顧客接点として重要であるため、アプリの一部機能から内製化に着手し、「セゾンのお月玉」を皮切りにスマホの顧客体験を磨いてきた。同キャンペーンの内製化を通じて、スマホアプリやサーバサイドを内製化しないとアジリティが手に入らないと感じ、開発を進めてきたという。

スマホの内製化を進めるにつれて、外部から来たプログラマーやデータサイエンティストが完全に決めると、事業部門の賛同は得られず、本当の困りごとの解決につながらない可能性もあると気付いた。そのため、クレディセゾンでは、デジタル技術やデータに関する知識やスキルに応じて、デジタル人材を3階層に定義した。デジタル技術やデータ活用に深い知識や経験を有する人材である「コアデジタル人材」に加え、ビジネス部門の知識や経験に加えて、デジタル技術やデータ活用をリスクリングし、全社のデジタル化を推進する人材である「ビジネスデジタル人材」、デジタル技術やデータ活用に関する知識を保有し、自らの業務に活用する人材である「デジタル人材」となる。

公募で手を挙げたエンジニアやデータサイエンティスト志望する人は、2カ月間の研修を経て。デジタル部門への配置転換を実施。2カ月後には高度な技術が身につき、移動後は外部研修やOJT(On the Job Training:オンザジョブトレーニング)による実務経験でデジタル技術を取得し、デジタル化を推進していく。

また、要件はビジネスサイドが決めて、製造は開発サイドが責任を持つなどの責任分界点をつくるのではなく、両者が一体となって、業務の課題解決につながるシステムを検討しながら、柔軟なシステム開発を実現する伴走型内製開発を加速させている。当初はスマホアプリを中心に進めてきたが、効果があるとわかったため、同社全体でDXを展開するため、2021年からはフェーズ2としてCSDXという全社戦略を作成して進めてきた。

システム開発でバイモーダル戦略
デジタル活用のイノベーション推進へ

全社でのDXを考えるうえで外せないのはバイモーダルの考えだ。失敗が許されない領域に適した安定性を重視するモード1の開発と、スピード性を重視し、時代の変化に素早く対応するスタートアップやエンジニアの世界で一般的なモード2つの開発の双方を協調するバイモーダル戦略を推進している。両者の良さやマイナス点を踏まえ、社内システムにインストールしていく。例えば、「対象業務」ではモード1は「予測可能業務」、モード2は「探索型業務」というように異なったことを提唱している。

それまではIT部門とデジタル部門は別々に存在していたというが、モード1と2の双方をもつCSDX推進部をIT本部として2021年に組成し、開発依頼をまとめた。モード1色の強いものはIT部門、FinTech企業とのコンペなどはデジタル部門が担うなどに分けた。

CSDX戦略では、顧客体験である「Curtomer Experience(カスタマーエクスペリエンス)」、また、社員の体験である「Employee Experience(エンプロイ・エクスペリエンス)」がビフォー・アフターで何が変わるか、また双方に寄与しないものは技術の乱用であるとしていると言い切っている。

さらに、一カ月に一回、CSDX推進会議を開催しており、会社全体の重要会議体にも明記されている。社長をはじめ役員全員が参加しており、1時間の会議の半分がアジェンダレスだ。2022年7月に「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」が出たときには8月には役員がデモをしており、11月にChatGPTが出たときに12月に利活用を検討した。

内製化は基幹システム連携の社内API基盤まで到達
インドのスコアリングを他国に水平展開

デジタル化には、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」がある。例えば、住宅ローンや家賃保証などのファイナンス事業はデジタライゼーションとして、業務プロセスのデジタル化に取り組む必要がある。ペイメント事業は、デジタライゼーションとして、デジタルを前提としたときにどう既存の業務を再設計できるかが求められる。新事業を創出するグローバル事業はDXが重要となる。その中でAIはすべてのステージでの利活用が求められる。

デジタイゼーションの事例として、例えば、住宅ローンはアナログだったものをデジタル化することで、従来3日かかっていた契約手続きが、最短30分に短縮するように進めている。音声認識AIを活用した問合せ体験の向上では、顧客の発話内容から問い合わせを判定し、オペレーターなどの最適な解決方法へ誘導するAI搭載チャットボットを導入した。AIによる自然な会話誘導により、コールセンター問合せ時の顧客ストレスを軽減するとともに、オペレーターのスキルに合わせた問い合わせ内容の事前把握を実現し、シームレスな顧客対応を実現したという。

デジタライゼーションの例として、スマホのリアルタイム性を生かした決済体験を進めている。クレディセゾンでは、最短5分で完結する「SAISON Card Digital」によるクレジットカードの入会体験と、入会後の利用体験をスマホアプリに集約させている。また、開発のUI/UXデザイン、アンケート調査等を内製化し、新たなサービスや機能の実装速度の向上を目指している。

同社はクレジットカードの基幹システム構築で苦労したが、2008年から10年後の2018年にリリースした。同社では内製開発で、「Amazon Elastic Kubernetes」などのクラウドネイティブな基盤を活用し、メインフレームのシステムをラッピングする社内API基盤を構築した。その中核となる決済の基幹システムを内製でクラウドによって実現したことで、クレジット決済関係のシステム開発が早くなった。

当初はキャンペーン機能から開始した内製化は基幹システムと連携している社内API基盤まで到達した。今後は会員サイトやCRMシステムなど基幹システムに近いシステムの内製開発を推進していくという。

DXについてはインドのレンディング事業で活用されている。インドのデジタルスタックをフル活用して事業を展開しており、今の時代を前提とした全く新しい金融事業ができ、急速にスケールしている。また、機能することが証明されており、タイやインドネシアに横展開することが始まっている。

また、CSDX VISIONの達成に向けて、デジタル基盤とデジタル開発を最適化し、デジタル技術やデータを活用できる人材が必要となる。そのため、「人材に一番の重きを置いていることが事業戦略の特徴となっています」と小野氏は話す。

2022年度は数字的な成果も積み重なっており、入会年度別ネット会員比率は92%(76%)、累計アプリダウンロード数は1,210万件(550万件)、セルフサービス利用率は86%(81%)、セルフサービス自己解決率は72%(63%)、2019年~2022年度の累計でのソフトウェアによる累計業務削減時間は79万時間、コピー用紙使用率は107トン(183トン)となった(カッコは2019年数値)。小野氏は「例えば、社員1人の労働時間は約2,000時間であるため、400人分をソフトウェアで代替しています。また、紙は積み上げるとスカイツリー2.3本分ですので、それなりの規模をデジタル化してきました」と話す。

これまでのシステム開発においては、戦略的重要性の高さ、予測不可能性の高さや開発規模などを考慮し、内製開発もしくは IT ベンダーとのハイブリッド開発にて、デジタル化を推進してきた。内製開発のリソースには限りがあるため、優先順位の高い案件から着手しており、未だなおシステム開発が未着手な領域が存在しているという。そのため、事業部門で内製開発を実現することで、より多くの案件の内製化が実現できるとした。小野氏は「全社員によるDXを目指してこの春から取り組んでいます」とした。

水野社長など経営陣がアプリケーション開発体験
事業部門での内製開発体制を強化

2023年3月には、「ノーコード・ローコード開発ブートキャンプ」を実施。代表取締役(兼)社長執行役員COOの水野克己氏をはじめ、経営層自らがアプリケーション開発を体験した。例えば、拡張性や適用範囲の大きい開発はデジタル部門が引き続き担うが、習得難易度の低いノーコード・ローコードでの開発を事業部単位で推進できるものがある。

事業ごとの特性や解決したい課題内容に合わせた適切なツールを選定するため、「ノーコード・ローコードツール標準ガイド」を設けており、事業部門の知識習得や技術活用を目指すという。特にデータの可視化・集計自動化のニーズがある。そのため、「Tableau」「DataSpider」などの利用ツールに適した学習方法を実施している。

また、デジタル知識の習得を推進するため、データトリブンワークショップを開催したり、自社データを使用した学習コンテンツを新たに構築した。さらに、成果物を作成、プロジェクト報告を実施するなど、知識とマインドを習得し、自部門の課題解決につなげていきたいとした。

現在3部門よりローコード開発の担当者を選定し、業務時間の4割(週2日)をノーコード・ローコードツールの知識学習の時間にあて、事業部門の課題解決に取り組むプロジェクトを推進している。また、デジタル部門からはプロジェクトを伴走する担当者を選定し、事業部門の知識習得と課題解決を同時に実施している。

AI活用による業務プロセス改革に向けての展開は?
複数のLLMとAPI連携、さまざまな内製開発を推進

クレディセゾンでは「生成AIを軸にした業務プロセスの全面革新」ができると考えている。

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