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国際ブランドのインターチェンジフィー公開へ、危機感を募らせるクレジットカード業界
2022年5月26日8:30
経済産業省が2020年・21年に実施した有識者による「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた 環境整備検討会」(以下、キャッシュレス検討会)、公正取引委員会の「クレジットカードに関する実態調査」では、国際ブランドにインターチェンジフィー(イシュア手数料、以下IRF)の公開を求める結論となった。この状況に対し、クレジットカード会社(以下、カード会社)をはじめとするクレジットカード業界はどう捉えているのだろうか? 取材を通し、反応を探った。
記事のポイント!
①カード業界からIRF公開に反対の声
②カード会社は加盟店開拓事業での収益は低い?
③アクワイアラがIRFの詳細を加盟店に説明するのは難しい
④加盟店から手数料引き下げの声の可能性も
⑤特定のブランドが不利を被らない状況が大切
⑥危機感を募らせるカード会社
⑦キャッシュレスの推進は利便性の訴求が必要?
⑧「優越的地位の濫用」には国際ブランドの柔軟な対応も
カード業界はIRF公開に反対意見
中小企業へのキャッシュレス推進で疑問の声も
経済産業省では、2020・2021年度に「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」(以下、キャッシュレス検討会)を開催したが、「会議やヒアリングの段階からIRFの公開を促すのは既定路線であったように感じました」とあるカード会社の担当者は語る。キャッシュレス検討会には、クレジットカード業界から、国際ブランドのビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)、カード会社の三井住友カードとジェーシービー(JCB)、オブザーバーとして一般社団法人日本クレジット協会(JCA)、日本クレジットカード協会(JCCA)が参加していた。
クレジットカード業界の関係者は、業界に与える影響から「IRF公開には反対」という意見があった。一方、クレジットカード業界以外の委員からは公開に賛成という意見があったのも事実である。「利害関係の中で意見が割れるのは予想されていましたが、反対する理由に対しての問題点が解決されないまま国際ブランドへ要請という形になったのは非常に残念です」(前出のカード会社)。
また、「中小企業のキャッシュレス推進において、IRF公開が適当な手段かは疑問です」と別のカード会社は述べる。2年間の検討会は中小企業へのキャッシュレス決済の普及促進に向けた議論となったが、キャッシュレス・ポイント還元事業の実績値からの試算では、未利用中小店舗のキャッシュレス化によるキャッシュレス決済比率の押上効果は最大3%程にとどまっている。日本では現金決済がさまざまなシーンで安全・便利に使われており、少額決済に適した電子マネー、普及が進むコード決済といった手段もあるため、IRFの公開で仮にクレジットカードの加盟店手数料が下がったとしても、中小店舗のキャッシュレス化にどれだけの影響があるのか疑問視する声もある。実際、ある業界団体からは「加盟店手数料が下がることが目的でいいのか」という指摘もあった。さらに、現金を取り扱うコストからみた際のメリットを把握したうえで、議論を進めるべきという声もある。
大手企業からの引き下げ圧力も
これ以上のコスト削減は厳しい状況?
また、IRFが公開されれば、大手企業からの加盟店手数料の引き下げ圧力が加わる可能性も否定できない。検討会では、クレジットカードなどのコスト構造について分析しているが、「カード会社はトータルで見た場合、アクワイアリング(加盟店開拓)事業では大きな収益を上げていない」ことが明らかとなっている。例えば、カード会社では、各社間の競争が厳しい状況に加え、加盟店手数料の改善など加盟店のコスト削減の努力を重ねてきたそうだ。現にIRFが公開されていない状況でも加盟店手数料収益は厳しい状況にあり、ネットワークフィー、人件費、ブランドフィーなどを踏まえると「アクワイアラとして現在のフィーが限界まで来ており、これ以上の引き下げは難しい」と考えるカード会社もいる。
もちろん、カード会社側も、中小企業向けの加盟店開拓を怠っていたわけではなく、例えば、三井住友カードでは中小事業者向けに、VisaとMastercardブランドは初年度2.80%から提供する「stera pack(ステラ パック)」を提供している。電子マネーやコード決済の決済手数料は3.25%だが、より低い手数料で国際ブランド決済を利用可能だ。また、Visaのネットワークに直接接続することで、中間コストを削減させたなどの事例もある。
IRF公開後の業務への影響を懸念する声も
加盟店の想像以上にカード会社の利ザヤは小さい?
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