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20223/15

埼玉県深谷市の地域通貨「negi(ネギー)」、3年間で700店舗超に拡大 地域経済の活性化だけでなく行政のコスト削減にも活用

2022年3月15日9:00

埼玉県深谷市は2019年度から、市内の商店などで使えるデジタル地域通貨「negi(ネギー)」を発行している。当初はプレミアム付商品券事業の実証実験のためのツールとして導入したが、その後事業の実施を通して利用者や通貨を利用できる店舗を拡大し、2021年4月から通常販売を始めた。通貨の循環による地域経済の活性化だけでなく、地域課題の解決に通貨を利用することで行政コストの削減も図る。

決済額の1%分をポイントバック
プレミアム付商品券事業を経て通常販売

深谷市が発行する地域通貨「negi(ネギー)」は、「1ネギー=1円」として市内の飲食店やスーパー、ドラッグストア、衣料品店、接骨院などで使える。スマートフォン向けアプリとQRコード付きカード、どちらでも利用できるのが特徴だ。

店舗でのスマートフォンによる支払いの様子

利用者は、店舗に設置されたQRコードをスマホで読み取るか、スマホやカードに表示されたQRコードを店舗の端末で読み取ってもらい、決済を行う。決済額の1%分が、その場でポイントとして利用者に還元される仕組みだ。市内の商工団体の協力を得て参加店舗を拡大し、2022年1月19日現在、市内の707店で利用できる。カードの発行や現金によるチャージは市の関連施設などで行える。アプリはクレジットカード、セブン銀行ATMでもチャージできる。

ネギーは2019年5月、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」の運営会社、トラストバンクが提供するデジタル地域通貨プラットフォームサービス「chiica(チーカ)」の第1号サービスとして始まった。同市は地域経済の活性化や地域課題の解決に地域通貨を活用しようと、2018年度に同社と連携協定を締結。デジタル地域通貨の導入に乗り出した。

両者は2019年5月から9月にかけて、プレミアム付商品券をキャッシュレスで運用する実証実験を実施。10%のプレミアムを付けた商品券を1億円分発行した(発行総額は11億円)。この時に商品券のポイントの単位になったのがネギーだ。実験には225店舗が参加。ネギーは1万円単位で販売され、合計2,358件(カード2,073件、アプリ285件)が売れた。実験期間中は、発行額とほぼ同額の約1億973万ネギーが利用された。

地域通貨「negi(ネギー)」は、QR コードを印刷したカードか、スマートフォンを利用して支払いができる

2020年度は、【新型コロナウイルスの経済対策】として、市内事業者を支援するために、プレミアム付商品券事業を実施した。2020年度は30%のプレミアムを付けた商品券をネギーで10億円分発行(発行総額は13億円)。実証実験時の約3倍の614店舗が参加し、商品券は完売。利用者は2万人を超え、約12億8,800万ネギーが使われた。未曾有の社会状況における経済対策として、ネギーを活用することができたという。昨年度から、通常販売を開始する予定だったが、コロナの対応もあり一年遅れ、2021年4月から通常販売を行っている。

市のコスト削減に地域通貨を活用
大手決済サービスとの差別化に課題

深谷市が主体となって地域通貨を発行する主な理由の一つが、通貨を活用した地域課題の解決だ。ネギーの運営を担当する深谷市役所 産業振興部 産業ブランド推進室 境野秀樹氏は「行政だけでは解決できない課題に市民や地域団体の協力を得て取り組み、そのお礼として地域通貨を渡すなどして自助・共助の促進を図っていきたい」と話す。市民らの協力により行政コストが削減できた場合は、削減分から協力者へ付与したネギーを引いた金額の一部を地域通貨発行の原資に回し、持続的に地域通貨を運用したいと考える。

その一例として、市は2021年11月から12月にかけて市県民税などの口座振替を申し込んだ市民に対し、アプリ限定で500ネギーをプレゼントするキャンペーンを行った。コンビニエンスストアで税金を納めた場合、市には1件につき67円の手数料がかかるが、口座振替だと11円となる。職員の事務作業の負担も軽減し、コスト削減が見込めるという。

また市の事業にもネギーを活用している。コロナ禍の飲食店を支援するため、(1)市内の飲食店で1,000円以上のテイクアウトをした利用者に300ネギーを付与、(2)出産祝い金をネギーで発行、(3)長寿のお祝いとしてネギーをプレゼントする、などの取り組みを行っている。

祝敬老ネギーカード

課題は、大手キャッシュレス決済との差別化だ。市内には、すでに「PayPay」などの大手キャッシュレス決済を採用している商店も多い。令和元年度から開始しているネギーの方が、PayPayよりも早く市内に普及していたというが、利便性などから、ネギーよりも、そのほかのキャシュレス決済を選択する人が多い。また現在、市は参加店舗から手数料を取っておらず、その分は市が負担している。利用者のチャージ手数料も同様だ。市は今後も事業を継続するため、これらについて検討していく。

当面の目標は利用者や参加店舗を増やすことだ。境野氏は「ネギーをうまくPRし、さらなる利用促進を図りたい」と意気込む。

また、3月1日から、市役所の手数料支払い(各種証明書発行手数料)をネギーで実施する。「行政はライフステージごとに市民といろいろなかかわり方をするため、そこにうまくネギーを結び付けたい」と境野氏。行政が発行する地域通貨ならではの活用策に期待したい。

カード決済&リテールサービスの強化書2022より

 

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